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Tokyo Activity Committee
On Saturday July 15, JAT will welcome Ms. Kayoko Nohara, a linguistics researcher of Gakushuin University. In this meeting, she will speak about her recent research on best-selling novels.
7月のJATミーティングでは、野原佳代子さんを講師にお迎えます。野原 さんは、学習院大学にて日本語学・翻訳論理学を研究しておられます。今回の講演は、翻訳文学における野原さんの最近の研究の成果をお話していただきます。
講演要旨と講演者紹介
ベストセラー文学の日本語訳に見られるストラテジーと文体の問題
梗概
本研究では、英語と日本語間の翻訳文学(特に大衆文学)のジャンルにおいて、どのようにテキストの意味とスタイルとが移しとられているかを調査する。なお英語と日本語間の翻訳はケーススタディとして扱い、翻訳の基本的なメソッドであるdomestication(同化=この場合、翻訳を日本語らしくすること)とforeignisation(異化=この場合、日本語訳に英語の特色を出すこと)の概念を中心においてテキストの分析を試みる。
翻訳者は、それぞれの翻訳ユニットに際しどのようなストラテジーを用いるかを決定する必要があるわけだが、その拠り所となるのが原文と、翻訳を行う条件・環境などさまざまな情報のうち、本人が優先するものである。それらの優先された要素を Operation Forces(操作促進要素)と呼ぶ。テキスト分析によって、たとえば言表態度副詞(まさか、せっかく、だって、いったい等)といった、潜在的に「翻訳を言語的に日本語らしくする」ことのできるJapaniserが選ばれ、頻繁に用いられることがわかる。この場合、必ずしもその表現が文脈の中でしっくり行くものでなくとも使われることが多い(イディオマティックなものへの引力と自然さへの引力とのあいだの優先問題)。同時に、あきらかにソース言語のなごりであるとわかるような、直訳からくる語彙的・構造的な英語らしさも消え残る。いかに同化されているテキストであっても、ネイティヴの日本人が同じような文脈において用いるもののように「自然」に創られているものは稀である(この場合の「自然」「不自然」には、望ましいもの、そうでないものという評価は含まれない)。このような不自然さは、異化と同化を操るストラテジーに一貫性が見られないこと、さらにそのために作り出される散漫さ・つぎはぎな感じが原因である。
こういった不自然さは、翻訳論(一般的なもの)の見地からすると翻訳文体の短所として受け取られがちである。不自然さは翻訳の読み手にそれが翻訳である、というあからさまな印象を与え、スタイルあるいはトーンの面で、原文と翻訳の間に大きなギャップを生じさせことになるからである。さらに文化的な同化・異化もまた混在する形で顕れており、言語的な同化・異化に比べればずっと影響は少ないとは言え、それもテキストに統一性がみられない一因となっている。文学以外の翻訳の場合、言語的な英語のなごりは翻訳においてあまりネガティヴな影響を与えない。これはそのジャンルにおいてふだん使われる日本語がそもそも英語などの西洋語的であるため、翻訳においても「自然な言語」のサインとして受け取られる部分が多いためである。
ベストセラー文学の翻訳テキストにおける日本語としての不自然さへの 許容範囲は一般的に広いようである。そこから感じ取れる外国らしさ・エキゾティックさは、翻訳に見られるよい意味でのユニークさとして、むしろ読み手が望むものでありその意味では翻訳文体として規範的(normative)と言えるからである。このために、日本語の翻訳は異化の方向に向けて引き寄せられることになり、さもなくば同化の方向へより進むかもしれないものを現地点にとどめているということが考えられる。自然な言語で書かれた翻訳は、原文の意味とスタイルとを忠実に表すという点で品質の高い翻訳ととられるが、それとは逆に、不自然さも読み手から期待されている。翻訳者はその2つともを実現させるため、異化と同化との間の非常にデリケートなバランスを保っているのが現状である。ある種の文体が規格化の方向つまり翻訳というジャンルの文体の確立への方向へ向かっているとは言えまいか。
野原佳代子
専門: 日本語学・翻訳理論学
学習院大学日本語日本文学科において文学修士号、英国オックスフォード大学において史学修士号(M.A. in Modern History)と翻訳理論学博士号(D.Phil. in Translation Studies)を取得。現在は学習院大学日本語日本文学科において研究助手をつとめる。また青山学院大学、法政大学において非常勤講師として教える。言語行為としての翻訳プロセスと、その結果としての翻訳文体の問題などに興味を持つ。今後は比較文学・比較文化の枠組みの中で翻訳をどうとらえるかをも考えていきたい。
JAT's meetings are held at Forum 8 in Shibuya, at the following address:
Forum 8, Dogenzaka 2-10-7, Shibuya-ku, Tokyo
東京都渋谷区道玄坂2ー10ー7新大宗ビル.
Please check at the lobby on the eighth floor to confirm the
room.
8階の受け付けで会場となる部屋をご確認ください。
日時: 7月15日2時30分から4時30分です。
JAT東京地区活動委員会
佐藤幸浩 (Hiro Sato)